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「あの人」 [ショート・ショート]

 あの人、否、あの子に出逢ったのは小学6年生の頃だったろうか。

 その頃から、男勝りなのに勉強スポーツも、いつも一番を欲張る負けず嫌いのあの子。

 高校あたりから、モデルなんかをやったりして、あの子は、とっても素敵な「あの人」になった。その後、モデルを脱ぎ捨て、モータースポーツに参戦してる…なんて噂は聞いていたが。

 夕べ、浅草の煮込みで一杯やっていると、あの人が、すっ、と通り過ぎていった。声をかけようと思ったが、あまりのセレブぶりに俺はビビってしまった。

 あの人は、道端で寝転んでいる猫を撫でながら「働け!」とひと言。
…俺はホッピー、焼酎おかわりをすると、人差し指でかき回し、その指を嘗めるついでに、指笛を吹いた。

 「ピーッ!」

 あの人は猫を撫でながら、こっちに鋭い視線を刺してきた。そして、そっ、と立ち上がると、モデルのようにしなやかに、こっちに歩いてきた。

 「…」

 「あたしにも一杯ちょうだい」

 ホッピーセットを頼んでやる。一気、呑み。

 「どっかで見た顔だけど、あたしの知り合い?」

 「あ、はい、小学生の頃…」

 「うふふ、変わらないわね。こりは。あたし、ちょっと疲れてるの」

 そう言うとあの人は俺の膝を枕に、寝転んだ。

 …それから、2時間。俺は固まったままだった。あの人のぬくもりは熱く、そして、本当に寝息をたてていた。

 俺はスカートがひるがえるたびに、周りのやばい視線から、あの人を必死に守った。

 「…あら、寝ちゃったか。あぁあ、と。じゃ、行くわね。お金、出世払いにしといてね。ぷっ」

 あの人は、俺のほっぺたに軽いキスをすると、タクシーに乗り込み、
何処かへと消えていった。

 足元にさっきの猫がいる。牛筋をやると「また、これか」みたいに、ゆっくりと食いやがる。

 「…ふぅ。明日の面接、通るといいんだがなぁ」

 流星群がちょうど、通過していった。(終)
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cory

こまったもんですねぇ^@^;汗だくw
by cory (2016-02-02 13:43) 

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