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「二男坊」~最終回~ [小説]


 復活



 ふと、目覚めると、そこは生ぬるい水の中だった。
 「うわっ、どこだ、ここ?」
 水は半透明で小さな気泡がたくさん浮き沈みしていた。

 「んっ、あれはお父さん?」
 ひとつの気泡の中で父親が淡く手を振っている。なんだか笑っている。注意して気泡ひとつひとつを見ると、母親や健一、洋子、そして岬さん、すけじぃ、かまやつ、徹、ミーナ、りえ、志田さん、キューピー、須田医師、ミニスカ看護士和田真由美さん、そしてノリ・・・みんながそれぞれに笑いながら手を振っている。

 と、ザーッ!と生ぬるい水が、明るい方へ流れ出した。

 「なんだ?夢かな。うふ。でも、この水、なんか安心できるな。いったいどこに流れて行くんだろう」

 「・・・んにちわ」「・・・んばって」
 
 俺の意識は段々と遠くなり真っ白になっていく。と、同時に優しく聞こえてくる声。

 「こんにちわ」「がんばってよ!」「ほら、もう少し」

 「よし、これなら、もう少しだ。岬さん、頑張って!」

 「うーん。うーん。えーいっ!こんくらいで負ける岬さんじゃないんだから。うーん、いてぇーよーっ!」

 すっぽん!

 「おんぎゃーっ!」

 「やったー!岬、偉いぞ!生まれたぞ!ノリくん、赤ちゃん、生まれたよ!」

 「よしっ!岬さんは、寝る。ぐー」

 「…ノリ、見てもいいの?」

 「うん、ちょっと待って」

 ミニスカ看護士和田真由美さんが、真っ白な着ぐるみに小さな赤ちゃんを大切に抱えて、ノリの目の前に。

 「わぁ、可愛い。って、あれ!ち○たま!女の子じゃなくて男の子かぁ。でも、ノリいいんだ。一緒に色々な遊びするんだ。ねぇ、岬お姉ちゃん、赤ちゃんの名前、なんていうの?」

 「ぐー。はい?そうねぇ、竜二なんてどう?男らしいでしょ?」

 「竜二かぁ。じゃ、竜ちゃんだね。うん!岬お姉ちゃん、どうもありがとう!ノリはこれからお兄さんなんだよね、そして竜ちゃんが弟!二男坊だぁ。嬉しいなぁ」

 (ん?また二男坊?・・・まぁ、いっか)
 俺はノリの小さな手を探すと、それより小さな手で、ギュッとよろしくの挨拶をした。

 「あれっ?この感じ?竜じぃ?」
 「しっ!」

 ノリは小さく笑うと、でっかくジャンプした。

 「よろしくな!」
                                      (終)

<あとがき>
                              
 人生、何が起こるかわからない。
 二男という星の下に生まれ、その僻みっぽい根性で、長男を褒める物語を書いていた。でも、だんだんどうでもよくなったところへ、三月十一日。地球の貧乏ゆすりは、あまりに突然だった。
 楽しいことや悲しいことや、おかしいことがいっぱいあっての人生。多分、被災された方もそんな人生を送ってきたと思う。
 「おいおい、ローンがまだ…」
 「子供が生まれたばかりなのに…」
 「ふぅ、路上生活も辛かったからな…」
 被災された人、ひとりひとり。この震災の意味は違う。亡くなられた魂たちの思いもそうだろう。
 うだうだと私小説ぽく書いていたけど、長男も二男もすべてがすっ飛んだ。だから、結末は潔く切り落としてみた。
 でも、悲しいとは思わない。
 悲しいのは、原発推進者が世界中に溢れていることだ。

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