So-net無料ブログ作成
  • ブログをはじめる
  • ログイン
ショート・ショート ブログトップ
前の10件 | -

「メリクリ」 [ショート・ショート]

「メリクリ」
「ううん、うん、メリクリ」
「…」
「って、誰よ?おめぇ!」
「ちゃちゃこです」
「ちゃちゃこって、俺が飼っている
元野良猫のちゃちゃこかよっ?」
「はい。夕べはご主人様がお酒を飲みすぎて、
私をきつく抱いたので、人間になってしまったのです」
「…ちゃちゃこ、どうでもいいけど美人じゃね?」
「えっ!もうそっち?そうなんですか?ちゃちゃこ美人なんですかっ!」
「おうっ!つげぇよ!あれだぁすぐ結婚すんべぇ!」
「えっ、いいんですか?人間のちゃちゃこですけど」
「あったりめぇだいっ!今まで俺を馬鹿にしてきた奴等に
悔しい思いさせてやるんじゃ!結婚だ、結婚!結婚!」

結婚しなきゃよかった。
人間のちゃちゃこは、
よく文句を言い、よく睨み、
こたつで丸くなったまま。
しかもあんなに美人だったのに、
妬み嫉みで醜い顔になって、
更にメタボ女子じゃん。

「ちゃちゃこ、猫に戻らないの?」
「・・・」

自分勝手なとこは猫のままか・・・はぁ。







nice!(2)  コメント(0) 

「ひまわり」 [ショート・ショート]


『ひまわり』

突然てやっぱり突然なんだ。
私は四十路の女性。
デザインの仕事をしています。
今は、自宅でSOHOをしていますが、
昔はデザイン会社におりました。
そこで、同期だった彼が亡くなった。
彼も独身。
なぜか、同期に独身は、多いのだけど。私の独身は幼い頃、自閉症気味だったことに原因がある。
そんな私が唯一、男性で心置きなく話せた彼。
身体はでかいけど小さな声で。
よく呑んだし、これからの老後も呑んでいけると思っていたのに…。
彼の死因はよくわからない。
異臭騒ぎから発見され、検死された。
分からないのは、去年、私の誕生日に、
なんかの箱に絵の具をたくさん詰めて送ってきたこと。
贈り物なんかするタイプじゃなかった。
「変だな?」と思った時に動けばよかった。
絵の具はドイツの高級品だったけど、
希望の色…太陽の光に近い黄色の絵の具が無かった。
先日、黄色い絵の具をたくさん買って、
近くの公園でひまわりを写生してきた。
チェリノブイリにたくさん咲いているというひまわり。
彼の希望に「私」はいたのか、いなかったのか。
私の希望は「彼」だった。
この溢れ出る涙を、彼は見ているのだろうか。
人前で一度も流したことの無い、この涙を。
nice!(1)  コメント(0) 

「ギターが聴こえる家」 [ショート・ショート]

『ギターが聴こえる家』

 海岸の側、狭い路地にその家はあった。

 ベランダからの風は潮風。
こどもたちはテレビゲームに嬌声をあげ、笑う。

 テレビからは19XXのビデオが流れる。

 心地よいリズム。ファンキーな旋律。安らぎ。
そのギタリストは、身体全体でリズムを取りながら、
音楽することが、本当に楽しい!という感じで、笑顔で演奏している。
シャープなカッティングと、柔軟なソロ。ぬくもりのある演奏だ。

 20XX年の今、彼はいない。


 だけど。
家族たちを、そっと見守っている。

妻はビデオのリズムに合わせて、まな板を叩く。

 とんとんとん!  スタタンタン!  キュ、キューン!  ドゥンドゥンドゥン! 

 

 「かぁちゃん、腹、減ったー」

 
 幸せが聴こえてきた。


nice!(0)  コメント(0) 

「躁鬱」 [ショート・ショート]

「躁鬱」

 数年前、ある同じ趣味のSNSで知り合った仲間とよく呑んだ。その中にひとりとっても明るく楽しい子がいた。
 おいらは「笑顔でやってくる子が好き」というキャッチを自分の名刺につけているほど、そういう子が好きなのでよくふたりでの呑みに誘った。いっつも、爆笑の呑み!まさに人生どこで幸せになるかわからない。
 ・・・ところがだ。吞んだ後、ウキウキと彼女SNSのコメントを読むと暗いのだ。「死にたい」とか「呑んでていいのだろうか」とか「どうにかしてよっ!」みたいな。しばらくして、彼女に元彼が酔って階段から落ちて亡くなったことを聞いた。そしてそれから躁うつ病で病院に通っていることを。結構の知りあいが鬱になっていた時代であったので気にしなかったが、あまりに「リアル呑み」と「コメント」に差があるので、デート自体、気が重くなった。リアルでは向精神剤の作用で明るくて、家ではそういう自分が嫌になるのであろう。しばらくして彼女と会うのはやめた。
 ところが最近同じ傾向の女性と仲良くなった。会うと楽しいが、SNSは毎回、反省文みたいなもんだ。ただ、前と違うのは、彼女のSNSが自虐的ながら面白いことだ。おかげでネット上で彼女の人気はうなぎのぼり。そして、そう。リアルの方が暗くなってしまったのである。おいらにはどっちがいいか、わからん。とりあえず「笑顔でやってくる子」も「心の中で泣いている子」かも知れないな、と自戒するのみである。

「断片」 [ショート・ショート]


「最後のレディか…」

 俺の胸に顔を埋めるように崩れ落ちてくる雪さんを俺はぎこちなく、
そして切ない気持ちで抱きしめた。このまま奪いたい気持ちを焼酎で騙しながら…。

 真冬の湘南の、それも夜の海には誰もいない。
俺はエリーを口ずさみながら、その暗い海を眺めていた。

 「初恋もつまずいたけど、また、つまずいたか。しょうがねぇ男だな、俺も。とりあえず、東京に戻れば仕事が待っている。それだけでも幸せなのかもな…」

 と、突然、砂浜を走る、ザザッ、という音が聞こえた。鮎ちゃんが砂に足を取られながらも、全速力で走ってくる。そして、俺の前で急ブレーキ!

 深呼吸、ひとつ。

 「…もうっ、村上さん、馬鹿だよっ。大馬鹿もんだよっ!お母さん、泣いてたじゃん!チャンスなんて待っててくるわけないじゃんっ!村上さん頑張ってないもんっ!ストレ-トじゃないよっ!鮎だって、死んじゃったお父さんのこと大好きだけど。それとこれとは違うもんっ!もう、あきらめちゃぅのかよぅ、お母さんのことっ。村上さんに会ってから、あんなに元気になったのにぃ。馬鹿だよ、村上さんなんて大嫌いだよーっ!」

 一瞬、シューベルトのセレナーデが聞こえたような気がした。

 「…ふぅ、キツイ娘になりそうだな」

 俺は素早く立ち上がると、鮎ちゃんのことを追いかけた。そして、きつく肩を抱き締めると、そっと聞いた。


 「1番になれそうか、俺?」


「船乗りさん」その4 [ショート・ショート]



息子さんが亡くなってしばらくは見かけることもあった船乗りさん。

ここ1年とんと見かけない。

雪積もる日も桜舞う日も玄関は閉められ、雨戸は閉じたまま。

額に汗をかき、今日もちょっと様子を見に行った。

草ぼうぼうだ。

白い瀟洒な二世帯住宅が石炭で汚された雪のように汚れている。

汚れちまった悲しみに・・・

その庭では僕と船乗りさんの三男(同級生)と遊んだ思い出がある。

長男にパフのギターを教わった。二男はいつも閉じこもって絵を描いていた。

そうか。おかぁさんは心臓病でいつも今に薄い布団をひいて寝ていた。

いつも「ごめんなさいねぇ、ちょっと身体悪くて・・・何かあるかしら」

と僕のことを気にした。

あの奥さんが亡くなって船乗りさんは元気を失った。

でも、そこに二男坊の家族が生まれて、孫ができて。

何がいけなかったのだろう。ほぼパーフェクトな人生じゃないか。

だから、さようなら。

どこかの施設にでもいるのだろう。それで、グッドジョブ!

ほとんど海外にいたのだから、

もうあなたを知っている人もいないさ。

僕ももう思い出さない。

「船乗りさん」その3 [ショート・ショート]

船乗りさんの二男坊が結婚したのは四十歳の頃。

元同級生の美しい方でした。

数年後、幼い娘さんと3人、日焼けして海から帰る微笑ましい光景によく出会いました。

でも船乗りさんの方は奥さんが亡くなり、急に元気がなくなりました。

それでも90歳超えてなおキチンとひとり生協に買い物に来ています。

たいしたものです。
…でも、そうですね。二世帯なのに…。
実は二男坊さんの家族と二世帯で暮らしているのですが、

船乗りさんは、二階を占領し、奥さんの形見と共に暮らしているのです。

頭の中に二男坊さん家族はいないのです。

数年前、二男坊さんとコンビニで話した時、

二男坊さんの奥さんの料理を食べない、孫娘と仲良くしない、

多額の年金を溜め込んで家のローンは一切払わない…と悩みを聞きました。

二男坊は本物の画家です。

もちろん生活費を稼ぐために教師や講師をしていますが、

空いてる時間はずっと絵を描いている。そのため中学の頃から青白くげっそりしています。

先日、なんだかいいクルマの運転席から目で挨拶されました。

相変わらず眉間のしわは深くげっそりしているのですが
「おっ、もうけてんなぁ」なんて思っていました。

今日、母親が船乗りさんに会いました。生協の帰り道です。

なんと、二男坊さんが自殺をしたそうです。

奥さんが娘さんを連れて実家に行き、

どうにかしようと土下座までしたけどラチがあかず、トイレで首を吊ったそうです。

詳細は分かりません。でも。

二男坊さん、奥さんと逃げちゃえばよかったのに。

よく家族、家族という人がいますが、私は家族を特別視しないようにしています。

他人もすべて同じ人間として見る。家族にだって敵はいる。他人にだって味方はいる。

くだらない世間体に縛られるのだけは、嫌です。

二男坊さんのご冥福を祈ります。

「船乗りさん」その2 [ショート・ショート]

「ファースト・キス」

私の妹は8つ下。小さい頃から子分にしていたため、
男っぽい言葉遣いだが、顔はまぁまぁであった。

そんな妹も思春期な小六。
帰宅するなり、歯を磨き、喉をゆすぎ、手を洗う。

「どうしたのよ」
「どうもこうもねぇよ!Kの爺ぃにキスされた!うげっ!」
Kさんは近所の叔父さんで船乗りさん。
年に数回、帰ってくるが、いつもお洒落にしている。
海外にいることが多いから、キスする習慣もあったのだろうが…

ツルッパゲの爺ぃに、ファースト・キスを奪われた妹。
今だったら、船乗りさん逮捕だろうな。しかし、運のない妹ではあった。

「船乗りさん」その1 [ショート・ショート]

友達のお父さんは船乗りさん。

半年くらいいなくて、帰ってくると、

よく、外国のお土産をくれて、

面白い話をしてくれました。

時は流れ、心臓病で寝たきりの奥さんが亡くなり、

船乗りさんは元気がありませんでした。

でも、最近はぼくに出会うと大声で、

「おうっ!元気か?」って声をかけてくれます。

昨日、友達に話を聞きました。

船乗りさんは可愛い孫娘も可愛いがらず、

部屋には思い出の品をたくさん集め、

ゴミのような部屋で暮らしているそうです。

食事も自分で作るそうです。

もう、来年90歳。

船乗りさんは、その職業柄か、

孤独を愛しているのかも知れません。

それはそれで、船乗りさんの人生なのだと思います。

「お隣さん」 [ショート・ショート]

「マンナブェグ テェウ バンガッスムニダ」

多分、韓国だと思う。
ぼくは、家族と一緒に、
なぜか韓国の家族に歓迎を受けていた。
それが血縁なのか、まったく無関係なのか、
は、わからないが、とにかく歓迎されている。

すごいのである。
お父さん、お母さん、お婆ちゃん、三人娘、ふたりの息子が、
笑顔のハイテンションで、喋る喋る!
トイレはあっちだー、肉、食え、この酒やばいぞー、
って、なんだかわからないけど、
おいらも会話ができないジレンマに落ち込みながらも楽しんでいる。

その三人娘の中で、二女の子が少し気に入る。
お婆ちゃんに、どの子が好きか?と聞かれ、
そんな答えをする。

みんながいない時、お母さんから、小さな極彩色の花瓶を貰う。

「一番目は大人しいけど、あんたのこと好きで、
それずっと作ってたんだよ!」とやさしく笑う。

どうやら帰国の途に着くらしい。
息子どもにやばい酒を貰う。

まだ幼い三女が言う。
「私、西の日本へ行くんだ。だって、日本人だもん!」

強い瞳が少し潤んでいた。
前の10件 | - ショート・ショート ブログトップ